あらすじ
『さがす』は、「岬の兄妹」の片山慎三監督が佐藤二朗を主演に迎え、姿を消した父親と、必死に父を捜す娘の姿を描いたヒューマンサスペンスです。物語は、大阪の下町に暮らす原田智（佐藤二朗）と中学生の娘・楓（伊東蒼）を中心に展開します。智が「指名手配中の連続殺人犯を見た。捕まえたら300万円もらえる」と話すのを、楓は冗談だと思って聞き流していました。しかし、翌朝、智が突然姿を消してしまいます。警察も大人の失踪には関心を示さず、楓は自力で父親の行方を捜し始めます。日雇い現場で父の名前を見つけた楓でしたが、そこにいたのは全く知らない若い男でした。失意の中、連続殺人犯の指名手配チラシを目にした楓は、その若い男が指名手配されている犯人であることに気づきます。楓は父の行方を追い続ける中で、次第に事件の真相に迫っていきます。共演には清水尋也や森田望智が名を連ねています。
監督：片山慎三
キャスト：佐藤二朗
キャスト：伊東蒼
キャスト：清水尋也
キャスト：森田望智
キャスト：石井正太朗
キャスト：松岡依都美
映画:さがすのレビュー・感想
観る者の心をえぐる、圧倒的なイヤミス作品
私が恐怖するのは、特別な能力や狂気を持つ人物ではなく、ごく普通の隣人が、何かのきっかけで奈落の底へ落ちてゆく、この作品のようなリアルな狂気だ。主人公・原田智を演じる佐藤二郎さんは、”どこにでもいるような平凡な男の、心の奥底に潜む闇”を、微細な表情や動作で表現していた。
最終版、人として崩壊してしまった原田の姿は悲惨の極みだ。それでも、どこか救いを感じさせるエンディングは、観る者に一片の救いを与えてくれる。また、ところどころに織り込んだ、原田と娘・楓、そして彼女の彼氏との乾いた笑いのピンポンは、作品の陰鬱な雰囲気に効果的なコントラストを生み出すことに成功している。そして、あまり見ることの無い大阪・西成の情景描写は、物語の舞台背景としてリアリティを与え、作品世界に深みを与えている。