【日吉祐樹×田中浩陽】無職転生 第2章 少年期 家庭教師編
日吉祐樹さん(30代後半):IT企業勤務。一児の父。主人公の欠点に自分を重ねる共感派。
田中浩陽さん(40代前半):独身の自由人。連載初期からのファン。親世代の視点も持つ。
田中さん:「第1章 幼年期」は、ルーデウス(ルディ)の性格や考え方が良くわかる物語でした。後半にはシルフィエット(シルフィ)二人の関係が共依存のようになっていく描写が依存系幼馴染という感じでしたね。特にルディのシルフィを自分の存在に全てと考える様は、どこか前世の引きこもりに逆戻りしているようにも見えました。
日吉さん:一児の父の視点で見ると、パウロがルディを気絶させてまで引き離した決断は、荒っぽいですけど必要な「親の仕事」だったのかな、と。あのままでは、ルディもシルフィも狭い世界で窒息してしまったはずですから。異世界転生ものでよくあるほのぼのスローライフも素敵ですが、無職転生では方向性が違いますからね。きっと数年後シルフィと結ばれるんだという未来が見える展開でした。
田中さん:馬車で意識を取り戻したルディに突きつけられたパウロの手紙とギレーヌの存在。パウロは一度突き放しましたが、あそこには彼なりの息子への信頼と、自分を超えていけという不器用な願いが詰まっていましたね。
日吉さん:手紙の内容はふざけた風ですがルディに課している制約は厳しい、今の自分にはパウロの気持ちが分かります。一方でルディは、馬車の中で自分の無力さを噛み締めながらも、新天地・ロアへと向かう。この「望まない自立」を無理やりさせられる感覚、社会人なら誰もが一度は経験する、あの胃が痛くなるような感覚に近いですよね。
田中さん:プロジェクトで失敗して一人でクライアント先に謝罪に行く時の辛さですね。胃がキリキリするやつ。
田中さん:そしてロアに着いてから、ついにエリス(エリス・ボレアス・グレイラット)が登場しました。これまで出会った女性たちとは正反対の、まさに「理不尽」を形にしたような少女です。
日吉さん:最初に出会った瞬間の暴力的な洗礼(笑)。仕事でも、論理が一切通じない相手と向き合うのが一番きついですが、ルディが培ってきた「交渉術」や「慇懃な態度」が、彼女の前では全く通用しない。あの絶望感には同情しました。個人的に理屈が通じない人は苦手でして。。。
田中さん:ルディが「自作自演の誘拐事件」を企てるあたりは、フィリップさんがすんなり了承しすぎていてルディにとって都合よくお話が進行している感がありました。あの部分がもう少しナチュラルに接続していたら、もっと作品が良くなるんじゃないかなと、評論家気取りで言ってみたりして。
日吉さん:確かにそうかもしれませんね、でも アニメでのエリスを庇いながら戦うシーンはかっこよかったです。初めての派手な戦闘シーンでしたね。
エリスに認められてから、ボレアス家での家庭教師生活が本格化し、エリスとの距離が少しずつ縮まっていく過程ですね。 傲慢なお嬢様を「教える」難しさ。
日吉さん:誘拐事件を経て、ようやくエリスの家庭教師として一歩を踏み出しましたが、エリスの「勉強嫌い」っぷりは凄まじいですね。一児の父として見ると、やる気のない子に机に向かわせるのがどれだけ大変か、ルディの苦労が身に沁みます。
田中さん:彼女の場合、単なるわがままというより、ボレアス家という特権階級の誇りと、本人の激しい気性が噛み合っている感じ。僕の弟は少しヤンチャな地域で公立小学校の先生をしているのですが、エリスのように手がつけられない子供が結構いるみたいです。そんな感じかなーと思いながら、読んでました。
日吉さん:ギレーヌも最初は無愛想な用心棒かと思っていましたが、自分の「無知」を恥じ、素直に学ぼうとする姿勢はとても立派です。本人からすると実体験からくる切実に必要な知識なんでしょうけど、いくつになって地位を得ても学ぶ姿勢は見習わないといけませんね。
田中さん:ギレーヌはいいですよね。「今の自分に足りないもの」を認めて、年下相手でも教えを請える大人は、本当の意味で格好いい。彼女が加わることで、ルディ、エリス、ギレーヌという歪な、けれどバランスの取れた「学び舎」が出来上がっていくのが微笑ましいです。職員会議も微笑ましい。
エリスは暴力でしか自分を表現できなかったけれど、ルディが根気強く、かつ対等に向き合うことで、ルディが単なる教師ではなく、彼女の孤独を埋める存在になりつつある。暴君でありヤンキー漫画の主人公だったエリスが、ルディの導きで少しずつ「レディ」の片鱗を見せ始める。
日吉さん:エリスとの「5年後の約束」にはニヤニヤしちゃいましたよ。
田中さん:ロキシー視点で描かれるパックス王子の横暴といった別の場所の日常が描かれた直後に、あの災厄が来る。龍神オルステッドが「どこで狂った?」と呟く不気味さ。そして、アルマンフィが現れたのを初めて読んだときはちょっと内容がわからなかったです。
田中さん:フィットア領が消滅する。あんなに丁寧に描かれてきた、ロアでの賑やかな生活も、ボレアス家の面々も、一瞬で「なかったこと」にされてしまう。フィットア領消滅から半年後に戻ってきたロキシーが見た「ただの草原」という描写が、あまりにも残酷で。
日吉さん:難民キャンプの描写は、東北の震災を経験した僕はありありと想像することができました。消滅なのでもっと綺麗な状態なんでしょうけど。昨日まであった家も、愛する家族も、帰ってみたら跡形もない。あまりにも重厚な「喪失」ですよね。
田中さん:パウロの伝言も、かつての「ダメ親父」の面影を残しつつも、必死に家族を繋ぎ止めようとする執念を感じました。「ルディなら一人でも辿り着けるから後回しにする」という言葉。パウロなりの、息子への最大級の信頼の証なんでしょうね。再開の時にも思いましたが、子供にどこまで求めてるんだ、と思っちゃいます。
さて、いよいよ次は魔大陸。ルディとエリスの冒険の旅が始まりますね。

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