あらすじ
映画『覇王別姫〜さらば、わが愛〜』は、中国の京劇俳優二人の愛憎と人生を描き、中国映画として初めてカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した作品です。この映画は1925年から1970年代末までの中国の動乱の歴史を背景に、京劇「覇王別姫」を演じ続ける二人の役者の生涯を追います。主人公の小豆子は幼少期に遊女の母に捨てられ、京劇の養成所で過酷な修行を経て、仲間の石頭とともに成長し、京劇界のスターへと昇り詰めます。レスリー・チャンが女形の程蝶衣を繊細に演じ、コン・リーは彼の恋敵である高級娼婦を演じています。監督はチェン・カイコーが務め、中国第5世代の映画監督としてその名を世界に知らしめた作品です。2023年にはレスリー・チャンの没後20年を迎え、作品の製作から30周年を記念して4K版が公開されました。
監督:チェン・カイコー
キャスト:レスリー・チャン
キャスト:チャン・フォンイー
キャスト:コン・リー
キャスト:フェイ・カン
キャスト:チー・イートン
キャスト:マー・ミンウェイ
映画:覇王別姫〜さらば、わが愛〜のレビュー・感想
2人の人間の数十年に渡る愛憎劇
レスリー・チャンの女形が美しいことで有名ですが、もう本当に綺麗です。もちろん全編を通していかに舞台上の小豆子や蝶衣が美しいかも見どころなのですが、大河的に中国の現代史を追えるところも個人的には面白かったです。前半部分の子ども時代、劇団で修行という名の虐待を受けて育つところが見ていて辛いです。暴力を受けながら育ち、それが芸を磨くことで、師匠や大人からの愛情で仕方がないこと本気で信じているところが、時代的に誰もがそう思っていたというのは分かるのですが、蝶衣と小楼の大人になってからの人格形成にかなり影響している感があります。価値観の違う現代人の意見かもしれませんが。2人とも妙に不器用な大人になり、子どものころからずっとずっと一緒なのに絶妙に噛み合わないまま時には極限まで傷つけあう関係性が悲しいです。ただそれも含めてこの映画の味です。文化革命のころの描写が特に衝撃的で興味深かったです。